彷徨える1日

セビリア→グラナダ

 朝4時にセビリアのプラザデアルマスというバスターミナルに到着し、置き去りにされた私は途方に暮れていたわけであるが、そんななか声をかけてくれたフィリピン人夫婦がいた。リスボンからのバスに同乗していた彼らは、明らかにぽかんとしている私を見て不憫に思ったのだろうか、どこに行きたいのかと聞いてきた。

私「グラナダに行きたいのだ」

フィリピン人夫婦(以下、フィ)「グラナダ行きのバスは何時なの?」

私「存じ上げない」

フィ「それはまことか?」

私「いかにも。それにこのターミナルで合っているかどうかさえ定かではない」

フィ「なんと。おぬし、人はそれを無謀と呼ぶのだぞ」

私「同じく私もそれを無謀と呼んでいる」

フィ「仕方がない。駅員が出勤してきたら私が聞いてやろう」

私「ありがたき幸せ」

 そういうと旦那さんの方が、6時頃に出勤し始めた駅員に対して、スペイン語を駆使して聞き出してくれた。グラナダ行きのバスはここから8時に出発するという情報を取得してくれた。

 フィリピンは太古の昔、スペイン領であった。それゆえに今でもスペイン語が話せる人物もいるのだという。彼らはこのままセビリアを旅するということで、この駅でお別れとなる。最後に教えてくれたのだが、彼らの職業は医者であった。お偉いさんだった。

 ちなみにセビリアには長距離バスターミナルが2つある。1つは私のいるプラザデアルマス。もう1つはプラドデサンセバスティアンというターミナルがあるそうだが、その違いは知らない。知っているのはプラザデアルマスからグラナダに行けるということだけだ。

 スペインではALSAというバス会社が国内のバス業界を牛耳り、蹂躙しているという。今回のバスもそのALSAであり、その後も幾度となくALSAを使うことになるわけだが、列車のように券売機で容易にチケットを購入できるので、ついついALSAを選んでしまうのだ。私同様この利便性に魅了された人間が、イベリア半島全土でALSA中毒という社会現象を巻き起こしたことは記憶にない。

 今回はこのままグラナダにすぐに移動してしまうわけであるが、本来セビリアも観光地として名を馳せており、フラメンコの聖地とまで言われているのだから、通り過ぎてしまうことはスペインに対する冒涜であるとも言えよう。しかしビールと無料のタパスのことしか頭にない私は、どこまでもグラナダを追い求めていたのだから仕方あるまい。

 とうとうグラナダに到来した私は、兎にも角にも宿を目指す。今回初めてAirbnbを利用して、ラファエルさんという方のお宅を訪問することにした。ラファエル宅はグラナダの中心部からはやや離れたところに位置しており、大学か何かの近くにあった。ローカルバスで簡単に行けることを知らず、あろうことか徒歩を選択した私は歩き始めてすぐに後悔した。バスターミナルから宿までを網羅する地図がなく、オフラインマップのダウンロードも忘れていたので、頼りになるのは住所だけであった。道すがらおばあさんや学生たちに住所を尋ねてみたのだが、誰も彼も知らないという。しかし確かに住所を見せたところでここだとすぐに言える人は少ないかもしれない。私が京都でそんなことを聞かれても、ほとんどの場合は家の場所まで特定できない。とりあえずなんとか自分の現在地は特定できたところで、そこから自力でラファエル宅の前まで漕ぎ着けた。

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グラナダの街並み。バルセロナなどとはまた少し違った雰囲気だ。

 マンションの一角にそのお宅はあるのだが、インターホンの名前にはドクターラファエルと書かれていた。なんとまあドクターに縁のある1日だ。そんなことを考えながらインターホンを押して部屋に上げてもらった。ラファエル宅は清潔であり、かつ生活感が溢れていた。生活感を隠す素振りもなかった。当の本人はというと陽気で親切な印象だが、ドクターなだけあるのか賢そうだった。

ラファエル「グラナダには何しに来たの?」

私「食べに来ました」

ラファエル「そうか、それもいいけどアルハンブラ宮殿は見ないのか?」

私「比較的見たいと思っています」

 アルハンブラ宮殿には入場制限が設けられており、特にハイシーズンは現在事前に予約しないと当日チケットは売り切れてしまうくらい人気らしい。そんなことはつゆ知らず、いつでも気軽に行けばいいと思っていた私はほんのすこしだけ落胆した。

ラファエル「明日の朝8時から並べば入れるかもしれないぞ」

私「そうであるか。では前向きに検討しよう!」

ラファエル「ここからこのバスに乗ってここまで行くんだぞ」

私「イェッサー!」

 そこまでしてアルハンブラに行く気のなかった私は、ラファエルに対する多少の罪悪感を背負いつつ、パンフレットを片手にグラナダの街に繰り出した。

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