ウノ チョリソ デ ピカンテ

スペイン/グラナダ

 ”LA CUEVA”
 この言葉は私の解釈によると理想郷を意味するようだ。冷蔵棚に陳列された多種多様な加工肉、天井から吊り下げられた数多豚の足たち。それらを見て理想郷と言わずにはいられない。神よ、これらの足を例外なく我に与えたまえ。

DSC_0082 5

 師匠に言われた通りLA CUEVAに赴いた私は、一目散にカウンター席に座り、「アーランブラ ヴェルデ, タパ デ カルネ」と唱えた。肉屋を名乗るにふさわしい強面巨漢の親父が現れ、瓶のまま私にアルハンブラヴェルデを差し出し、ゴリゴリと生ハムを削り出す。ちょうどシエスタの時間帯の店内には私以外に客が1人いるだけで、閑散としていた。

DSC_0080 4

 「おいしい」。これ以上にふさわしい言葉があるのかどうか、私の稚拙な語彙集のなかを一通り暗中模索したのだが、それ以上の言葉は見つからなかった。この場合、「おまえの語彙が足りないのだ!」という指摘は断固受け付けない。これは是非グラナダに来て味わってほしい。こんなことを言うと日本でも食べられるじゃないかと、ヤケを起こしてジャパニーズによるスペインバルに突入する輩がいるらしいのだが、前々から繰り返し主張し続けているように、日本の生ハムとは全く別物だという意識を強く持ってほしい。百二十五歩譲って生ハムが日本で食べることができるとしても、アルハンブラを飲むことのできる店はほとんどない。あったとしてもアルハンブラエスペシャルの方である。両方飲んでみたのだが、ヴェルデの方がうまい。「それはおまえの舌の好みだろう!」という指摘に対しては、毅然とした態度で「知るか!」と応じたい。

 いわゆるところ「ゑゑかんじ」になった私は、冷蔵棚の前に仁王立ちしたうえで、陳列された加工肉たちを睥睨し、「ウノ チョリソ デ ピカンテ」と唱えた。先ほどの親父が召喚され、チョリソを真空パックにして渡してくれた。飲食代とチョリソを含めて6ユーロほどであったから驚きである。チョリソはもちろんまるまる一本、30cm定規ほどの長さだ。店を出た私はベンチに腰掛け、チョリソを丸かじりするというなんとも野性的な一面をグラナダ市民に披露したわけだが、恥ずかしさなど微塵も感じさせないほどのうまさに驚嘆し、LA CUEVAのチョリソを伝説の食材として殿堂入りさせることにした。

 この感動を師匠と分かち合おうと広場に戻ってみたが、彼の姿はもうそこにはなかった。グラナダでの遊び方を教えてくれた師匠には感謝の意を表明申し奉りたい。アーメン。

 食欲の権化と化した私は、滞在中の食物を確保するために聖地メルカドーナを目指した。私はメルカドーナが大好きだ。かの有名人も「迷わず行けよ 行けばわかるさ メルカドーナ」とこぼしたほどだ。私は迷わずメルカドーナへと歩を進め、道に迷いながら辿り着いた。「聖地メルカドーナ」またの名を「食品スーパー」という。海外節約志向委員会の頂点に君臨する私は、とにもかくにもスーパーで食材を調達する癖があるようだ。いつものようにパンに生ハム、チーズ、果物、お酒などを購入し、店内を十二分に闊歩したうえに、生ハム売り場でたっぷり目を保養してからメルカドーナを後にした。

 外に出ると至るバルが活気を帯びはじめ、スペインの長い夜が始まったことを意味していた。食材を買い込んだにもかかわらず、ふらっと立ち寄ってしまったバルでビールとサングリアを飲み、タパスが都度提供される喜びを噛み締めていた私はふと、こんなに自分はお酒が好きだったのか?という疑問を感じた。実際のところ、学生の頃はお酒は好きだったが、大好きというほどではなかった。しかし間違いなく、スペインでこのような生活を繰り返すうちにお酒が大好きになった。それは世界最高のおつまみがあるということも後押ししている。酒好きにはたまらない国、それがスペインである。

 さて、明日こそアルハンブラに行ってみようなどとは微塵も思わない。のんびりぐだぐだ酒びたりの1日を過ごしてやろう。

押せ!と師匠に言われたので
押してください。本当です。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

にほんブログ村

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です