幻惑のシャウエッセン

モロッコ/シャウエン

 青い町。そんな幻想的な言葉を耳にすれば、世の中の数多女性陣は興奮を隠せず、盛った猫のような奇声を発しながら、なりふり構わずシャウエンに殺到することだろう。ひとたびスマホで「シャウエン」と打てば、「シャウエッセン」が我こそはと主張しだすが、それもご愛嬌。私もそのような幻想的世界をこの目で確かめたいものだ。

 息も絶え絶え、タンジェのバスターミナルに到着した私は、雑多な構内で多くの民営バスの猛烈な勧誘を受けながら、あるバス会社の窓口を探していた。
 モロッコには2大バス会社があり、ひとつはCTM、もうひとつはスープラトゥールというバス会社がその存在感をいかんなく発揮しているという。が、その違いはよくわからない。それから他にも民営バスがたくさんある。
 CTMが最もまともだという根も葉もない噂を信じていた私はこの時、CTMの窓口を探していた。そしてそれはいとも簡単に見つけることができた。窓口の親父はやる気の欠片もないような態度で私を睨みつけ、私はその視線を上空へと反射させた。反射させた怠惰な視線は綺麗な放物線を描き、他のモロッコ市民に直撃する。こうして国民性というものが出来上がる。ちなみにチケット料金は50DH=700円ほどであるというから驚きだ。

 しばらくするとターミナルのスタッフが「シャフシャウエン!シャフシャウエン!」と大声で喚きはじめ、それに合わせて勢いよくバスがやってきた。荷物は預けずにバスに乗り込み、一応指定されているであろう窓側の席に座った。荷物を預けると5DHくらい払う必要がある。私はそれをケチったのではなく、荷物をモロッコ人に任せることなどありえないという、未だに被害妄想の草原をかき分けている最中だったため、車内に持ち込んだ次第である。
 バスは日本のそれよりかは広かったが、灰皿にはおびただしい数の噛んだ後のガムが詰め込まれ、車内ではハエが何匹か飛び回っていた。

 車窓から覗く景色は、日本にある「荒涼」という言葉をかき集めても足りないくらいの荒涼さであったが、バスの乗り心地は飛び回るハエをいないものとすることができれば、思っていたよりも快適であった。途中、休憩が何度か挟まれたのだが、いったいいつ出発するんだと日本人なら誰でも痺れを切らすほどに適当な休憩時間であった。おそらく運転手の気まぐれの上に成り立っているのではないかと思うほどだ。
 モロッコの人々に隠れてこそこそとチョリソを囓りながら車内での約3時間強の時間を過ごし、バスは青い町シャウエンに到着した。

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シャウエンのターミナル

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時刻表

 私の乗っていたバスには他にも日本人の女性が同乗していた。バスに乗る前から薄々気づいてはいたものの、人見知りの化身とまで言われた私に、同じ日本人だからといって自ら進んで声をかけることなどできない。そんなことをしていたら、日本では常に道行く人々に、”日本人だから”と声をかけ続けなければならないではないか。しかしながら、その女性は私の知る限りの一人旅の荷物量を圧倒的に凌駕していたゆえ、何かと大変だろうと声をかけて差し上げた。彼女の荷物の正体は「絨毯」だそうだ。そんなもの送ってしまえば早いものを、と思ったが料金もバカにならないのだろう。
 宿がすでに決まっているということだったため、バスターミナルからシャウエンのメディナの前まで一緒にタクシーに乗った。タクシーに乗る前にモハメドに言われた通り、しっかり値段を確認したら、15DHくらいだった。値切れたのかも知らないが、正直200円程度なので、気にすることはなかった。

 モロッコでは値切り交渉は楽しむが、同情しながらお金も差し上げることに決めた私であった。そう割り切る方がお互い幸せだろう。
 門前のスークの近くで降ろしてもらい、散策がてら宿の場所を探すのを手伝うことにした。

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 迷路のようなこの町はどこまでも青い。私は紳士のように「Casa Amina」という宿まで送り届けたあと、自らの宿を探し求めて右往左往しながら、そして必要のない自称ガイドに付きまとわれながら、「Souika(スイカ)」という宿にたどり着き、ガイドを名乗る男には5DHあげた。少ないとでも言いたげだったが、日本でも子どもに100mくらいの道案内を頼んだらそんなもんだろうと、彼の言い分は黙殺した。
 念のためアルヘシラスでここのドミトリーを予約していたのだが、部屋には空きがあるようだったので、1人部屋に変更してもらった。一泊100DHだった。

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 先ほどの女性と晩御飯を食べる約束をし、のちほど門の前に集合することにした。彼女の名前を覚えていないことはここだけの秘密である。それまで時間に余裕があるので、暇つぶしに町を散歩することにした。

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