オアシス

フェズ→メルズーガ

 ”ブラックデザート”をご存知だろうか。

 ”ブラックデザート”とは、意味はそのまま、”黒い沙漠”のことである。多くの場合、砂漠と言えば赤くてサラサラした砂をイメージされるだろう。しかし”黒い沙漠”は、黒くてゴリゴリしたダークマターの如く石ころが転がっており、終末的な雰囲気を醸し出しているという。それはアフリカ大陸のあちこちに散在し、モロッコとアルジェリアの国境地帯にもあるのだそうだ。今回私が訪れるメルズーガ大砂丘は、そのアルジェリア国境に程近いところに位置している。

 アルジェリアと言えば、イスラム系武装組織によるテロの多発や、日本人人質事件が勃発したことなどが記憶に新しい。それらの前情報を過剰摂取し、被害妄想へと展開した私は、暗黒世界で暗黒武装集団や暗黒生物らと戦うための装備を施すに余念なく、バイトの先輩から「エボラ対策に」と渡された、バファリンとマスクをいつでも取り出せるところに格納しておいた。

 しかしながら、モロッコとアルジェリアの陸路での国境は封鎖されているそうだ。つまるところ、私が暗黒世界と対峙する可能性は無くなった。したがってバファリンとマスクは再び「エボラ対策」という本来の目的を取り戻した。

 ちなみにバファリンとマスクのエボラへの効用は皆無である。皆無であると知ってか知らずか、いずれにせよ私にそれをくれた先輩はもはや救いようのない人物であることは明らかである。

 フェズのカルフール(大型スーパー)でモロッカンビール(通称コカコーラ)など、旅のお供を買い揃え、我々一行は夜行バスに乗り込んだ。今回はCTMではなくスープラトゥールというバス会社を利用する。

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 注意しなければならないのは、フェズ発のスープラトゥールはバスターミナルがないという点だ。鉄道駅の向かい側に代理店があるので、そこでチケットを手配する。バスは代理店の前にやってくる。

 夜行バスはとんでもなく暇であった。仕方がないので、ダイスケ氏に教えて貰った漫画アプリで「ブラックジャックによろしく」を読み耽っては、日本の医療業界の問題点と悪戦苦闘する主人公とともに怒り、ともに憂い、ともに喜びを覚え、ともに狂い、挙げ句の果てには精神状態が不安定になり、ほとんど一睡もできなかった。ダイスケ氏を恨む他ないだろう。

 ふと窓の外を見ると暗がりの中に、いくつもの「カスバ」が不気味に佇んでいた。それはまるでRPGの世界に迷い込んだかのような風景であった。物陰から様子を伺っている暗黒生物に対峙したときのために、「ヒャダルコ」を唱える練習をした。

 午前5時頃、バスはメルズーガのバス停に到着した。フェズの宿のオーナーからは、バス停までホテルオアシスのスタッフが迎えに来てくれると言っていたので待っていると、約束通り一台の車がやってきた。降りてから気づいたのだが、ただのタクシーだった。50DHくらい取られた。なんじゃこりゃ。

 宿に着いたはいいものの、朝が早すぎるためかフロントは静かで、物音ひとつない。

 兎にも角にもベッドが恋しい。一刻も早く私に安眠を。

 ほどなくして奥からスタッフと思しき人物が現れ、チェックインの手続きを済ませてくれた。続いて伝説のオーナー”アリさん”が現れた。「メルズーガといえばアリさん」と謳われるほどに有名な人物である。なぜそこまで有名なのかは後ほどお分かりになるだろう。我々はそれぞれ部屋へと案内され、ようやく腰を落ち着けることができた。

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 ダイスケ氏もヨーコ氏も眠いから寝ると言って部屋に閉じこもってしまった。私ももちろん何も考えずに眠ってしまいたかったが、なんだか朝日を拝みたい気持ちになったので、2階のテラスでカメラを構えてじっと待っていた。

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 砂丘の向こうから徐々に朝日が滲み出し、幻想的なグラデーションを生み出していた。

 おお、あれが砂漠か。私はアラジンの世界の砂漠と、世界史の資料集に載っている砂漠しか知らない。実物を目の当たりにした私の興奮はとどまるところを知らない。きっと鳥取砂丘の何億倍もの興奮が待っているのだろう。(鳥取砂丘に行ったことはない)

 そのまま眠らずにいられるかと思われたが、さすがに体が耐えきれず、御来光を待たずして、一目散にベッドに飛び込んだ。

オネガイシマスオシテクダサイ
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