砂から岩へ

メルズーガ→トドラ

 ダイスケ氏が砂漠を去った翌日である。とうとう私たちも居心地の良かった砂漠を去らなければならない日が来てしまった。3泊過ごしたホテルオアシス。キョーコ氏に至っては12泊くらいしていたことになるわけだが、親切がとどまるところを知らないこの宿はもはや第二の家である。申し分なく充実した日々を送ることができた。ここでの体験は、余白の多い私の学生時代の記憶にありありと刻まれることとなった。

 それから、モロッコ旅行を企てている人がいれば、ホテルオアシスには是非訪れてほしい。アリさんをはじめスタッフは全員優しく、部屋は広いし、ご飯も美味しい。さらには不揃いなトランプで遊ぶこともできるぞ。

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 ヨーコ氏・キョーコ氏とともにバスに乗り込む。彼女らの次なる目的地はマラケシュであるという。その時の「マラケシュでたらふく買い物をしてやるんだ!」という彼女たちの攻撃的なまなざしを忘れることは決してないだろう。大阪のおばちゃんも目を丸くするような勢いであった。

 一方、私の行き先はトドラ渓谷である。グランドキャニオンを彷彿させるような雄大な岩の大地だという。そんな岩の狭間にバックパッカーに人気の日本人宿があるのだという。「ノリコさんの宿」と検索すればすぐに引っかかるほどの有名宿である。そこではタジンに飽き飽きしていた私が夢にまで見た日本食を貪ることができるのだ。モロッコ周遊ルートのうち、「舌の休息地点」と私は呼んでいる。ちなみにその宿の予約もアリさんがしてくれた。どこまでも親切が行き届いている。

 トドラ渓谷へはティネリールという比較的大きな町からタクシーやミニバスを利用していくことができる。マラケシュへ向かうバスは途中4時間ほどでティネリールへ到着し、私はそこでヨーコ氏やキョーコ氏に別れを告げる。彼女たちはマラケシュに5泊くらいすると豪語していたので、トドラの次にはマラケシュ行くつもりだった私は、マラケシュでまた合流することを約束してバスを降りた。ちなみにマラケシュまではさらに8時間ほどかかるらしい。

 バスターミナルにノリコさんの迎えがあるということをアリさんから聞いていたので、しばらく待機していたのだがそれらしい人は一向に現れなかった。見ず知らずの街でそわそわしていると、一人のモロッコ人男性が現れ、「たろゑもん?」と尋ねてきた。どうやら彼が迎えの人間らしい。よく分からないがタクシーに乗るというので付いていったが、彼は途中でホテルを見かけると、私にまあまあ流暢な日本語で「ワインを2本買ってきてくれ」と言ってきた。自分で買いなはれや、と思っていた私だが、彼は一応イスラム教徒なのでワインを買うことは許されていないのだろう、仕方がないのでホテルでワインを二本調達してきた。

 それからグランタクシーにすし詰め状態で走る事約30分。岸壁に囲まれた山間の道の途中にあるノリコさんの宿に到着した。

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出迎えてくれたノリコさんは実にエキセントリックな風貌をしていた。それに加え優しさが滲み溢れている。お母さんにしか見えない。お母さんかと思った。

 到着した時点では客は私一人だけであった。広い個室に通され、窓の外から聞こえて来るヤギの声に耳をすませながら、すこし休憩することにした。

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