男と女の湖

モロッコ/イミルシル →前回の記事はこちら

 スークを楽しんだ我々は、放し飼いにしていたグランタクシーの運転手を錬金術によって召喚し、ぼちぼち湖へと向かう。

 今しがた購入したジュラバを身に纏うことによってどうやら現地人化してしまった私は、道行く人に声をかけられるようになり、ばかにされているとも知らずに、ベルベル人として認められたというえも言われぬ感動を覚え、このまま農耕民族として村に永住してしまうのも悪くないなあ!と思う次第であった。
 私のようなごみ人間は、日本に帰って俗世間でのうのうと蔓延り、真面目な人間の人生を邪魔するくらいなら、イミルシルでさらにのうのうと暮らす方がいいに決まっている。
 イミルシルの豊かな大地で暮らし、畑を耕し、ガラクタを売買し、モロッコ全土にイミルシルの雪解け水をお届けする私の功績は計り知れない。日系ベルベル人としてその名を世に轟かせるのは時間の問題であろう。しかしそのためにはまずはトイレを清掃しなければならない。私はトイレの汚い土地には住まうことができない。

 なんだかよく分からないが気がつくと女の湖に到着していた。

 イミルシルには「女の湖」と「男の湖」があることは前々回の記事で紹介したと思う。
 ある男女2人が、長い年月を費やして体内に蓄え続けた液体を、体外へ放出したことによって人工生成されたのがこの湖であるとのことだった。その液体が一体どのような成分で構成されているのかは未だ解明されておらず、モロッコ政府の緊急課題として掲げられている。

 今回私が湖にかける思いは高校球児の甲子園出場への夢をはるかに凌駕するほどのものであり、この日のために来る日も来る日もカサカサの唇を割ったり閉じたりしながら仲間の応援を待ち、目の前に広がる絶景への妄想作業も怠らなかった。青い空、えめらるどぐりーんに輝く水面、周囲を取り囲む高山。そのような神秘的な光景を思い浮かべるに余念がなかった。

 しかし私が目にした女の湖は、そんな思いを無碍にするほど凡庸であった。

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 これなら京都から東へ電車で片道30分の景色と変わらないではないか、と言っては過言であるが、私が写真で見たイミルシルの湖はもっと美しかった。だのに、なぜ。

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 「まったく酷い仕打ちだ!」と心の中で叫びながら苦し紛れの笑顔で写真に写る私。みんなも同じような感覚を心に抱いていたようであった。はるばるこんな人類未開の地までやってきたのだからもっとすんごいのが見たいぞ!
 しかしともすればこの先にある男の湖に対する期待は薄い。これでBWKと何も変わらなかったあかつきには一揆を起こすぞ!乱世の始まりだ!

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 ……ええ、前言を撤回させていただきます。イミルシル及び全ベルベル人に謝罪の意を表明しジャンピング土下座をし奉りたい。

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 私はこんなに雄麗な湖は見たことがない。えめらるどぐりーんに輝く水面、雪と大地が織り成す大迫力の縞模様。ここはアルプスですか?

 ということで、やはり私の目に狂いはなかった!これがイミルシルの湖を疑うことなく信じ続けた結果である!BWKと一緒だとかのたまう輩にはこんなところに来る資格はない!おととい来やがれ!

 …すみません。純粋な気持ちを取り戻し、信じ続けることを誓います。

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 満場一致の大満足だった様子で、帰りのすし詰めタクシーでもお構いなしに、皆爆睡であった。

 モロッコでの砂漠に次ぐ第二の目標、イミルシルの湖を見る。ここに完結。

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