神降臨【シェムリアップ2日目】

カンボジア/シェムリアップ →前回の記事はこちら

 

 この日はアンコールワットの朝日を見に行く予定であったが、昨晩宿でプレアビヒアいうよくわからない辺境の地へのツアーを募集していたので、寂しがりやの私は朝日を放り投げてそちらに参加することにした。バンで片道およそ4時間という苦行であるわけだが、その先に待っているものはどれほど素晴らしいものなのだろうか。

 朝7時半にロビーに集合する。人数は12人と満員であり、シティゲストハウスのツイッター効果で他の宿からも人が集まっていた。12人で120ドル。そう、旅は時として大勢の方がいい場合もあるのだ。

 バンに乗り込み、後部座席で足を屈折させながら凝り固まった状態で車中の時間を過ごしたわけだが、私のような人間はこんなぞんざいな扱いを受けていれば十分である。

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朝食

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 ちなみにプレアビヒアはみんなが仲良くなるには絶好のイベントだと宿のスタッフは口を揃えていう。宿に戻ってからはBBQをするというし、こんな楽しいことはないなあ!と思っていた。なのになんだこの車中の静けさは!
 と嘆いているうちにバスはプレアビヒアの麓に到着した。



 プレアビヒアというのは天空の城のことらしい。シェムリアップにやってきてからというものの、ラピュタ的要素しか今の所感ぜずにいられないのは気のせいだろうか。

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 麓からはバンでは登れないような急な坂道やガタガタの道が続くので、なんだか強そうな車へと乗り換える。
強そうな車は別料金で、2台手配で50ドルであった。一人頭4ドルという計算となる。格好をつけたい愚かな男性社会人の私と、自らを先生と称するダイチさんは5ドルを支払った。こんなことで格好がつくわけないのだが、愚かな私たちは気づくこともない。

 車が走り出し、しばらくして坂道に差し掛かると突如として雷雨に見舞われた。まるで神殿に近寄るなと言わんばかりの神の怒号のような雷雨である。
「もう帰りたい」誰もがそう思ったにちがいない。一方で私は「みんなの何百倍も帰りたい」そう思っていた。



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 約30分ほど、溶岩によって形成されたかのようなごつごつした岩の道を車は進む。過去に例を見ないほどの不安定さであった。
 山の中腹に差し掛かったところで車は止まった。どうやらここからは歩いて行けということらしい。しかし雨具を用意していないサバイバル経験値0の我々は車で待機するほか選択肢がなかった。
 降りしきる激しい雨が、後部座席のビニールカーテンの隙間を通り抜け、肌を冷たく濡らした。雨に対する防護策もなく、我々はただぷるぷると震えていた。

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 後部座席で待機していると、おばちゃんやお姉さんたちが幾度となく往来し、カッパを売りつけてくる。よく雨が降るからこうしてタイミングを見計らってやってくるのである。ちなみに彼女が手に持っている毒々しいものはおそらく毒である。

 そういえば誰かが言っていた。
 プレアビヒアでは1時間おきに雨が降るのだそうだ。もしくはどこかに雨を降らせるスイッチがあって、管理人がそれを押して入場制限をしている。スイッチが押されるのと同時にカッパ売りのおばちゃんがゼンマイ仕掛けで出現するという仕組みである。
 どちらの説も根も葉もないが、私は後者の説が好きだ。

 男たちはあほなので、「何があってもカッパだけは買わない」と団結し、底意地の悪さを露呈していた。
 しかしながら待機していてもしようがないので、雨が弱まった隙を見て出発した。女性陣はカッパを買っていた。

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 霧がかった神殿への道はどこか神秘的で、まるでRPGの世界に潜り込んでいるようであった。

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 取り急ぎここで記念撮影を撮る。記念撮影は仲を深める第一歩である。

 しばらく進んでいくと雨もおさまり、よかったねえとわやわや談笑しながら歩いていると、前方に妙な人影が見られた。

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 神の降臨である。青い衣を身にまとった彼女は我々をギロリと一瞥し、次のような構えを見せた。

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 ヒップホップの構えである。なんともファンキーな神がいるものだなあと感心していた。

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 現れた神は崇めなければならない。神の預言を受け我々は手を差し出した。

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 どうだ。楽しそうであろう。実のところ楽しい。

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 我々の写真はすべて、頼んでもいないのにこの妙なカンボジア人のおじさんが撮ってくれていた。まるで引率の副担任の先生のような振る舞いである。

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 一行はさらに奥深くへと進んでいく。

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 とうとう山頂へ到達し、カンボジアの大地を一望できると言われるその大地を踏みしめるべく、意気揚々と見下げてみたが、そこからは何も見えなかった。絶望的である。

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 しかしながら遠くの方では晴れ間が覗いていたこともあり、我慢強く待っていると、案の定雲が晴れ、壮大な風景が現れた。神の御言の通りである。

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 ふと耳を澄ませると、岩の陰で女の子の声がした。少し覗いてみるとそこには妖精のように可愛らしい少女がたたずんでいた。

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 あまりにも可愛らしいので話しかけてみたが、会話は成り立たなかった。

「Hello?」と言うと
「あっちぇい」と返してくる。

「How old are you?」と言うと
「あっちぇい」と返してくる。

「こんにちは」と言っても
「あっちぇい」と返してくる。

 あっちぇいってなんだ。仕方がないので彼女が言葉がわからないことをいいことに、おじさんたちは名言を残していった。

「少女よ、この世で男女の仲ほど難しいものはないのだぞ」
「あっちぇい」

「少女よ、死とはなんだ」
「あっちぇい」

「少女よ、お前にサンが守れるか」※言ってない
「あっちぇい」

 どうやら「あっちぇい」は「わかんない」の意味のようだ。
 ならばと女性陣が持っていたガイドブックを引っ張り出し、朗読した。すると奇跡が起こった。

「チョムリアップスオ〜」(こんにちは)
「チョムリアップスオ〜」

「オークン」(ありがとう)
「オークン」

 やった、通じた…!復唱する彼女はまた、大変麗しゅうござった。
 私は彼女に「あっちぇい」と名付けた。



 こうして丸一日に及ぶツアーは幕を閉じ、帰りのバスでは皆仲良く談笑していたので、楽しく過ごす事が出来たのであった。しかし私がプレアビヒアに行く事はもうないだろう。

 宿に戻るとすぐにBBQが始まり、本日も際限なくビールを飲み続け、肉を喰らい、猥談にふけった。ふと我に帰り耳を澄ませると、ありとあらゆるところから猥談が聞こえた。どうやら我々人間というものは、どこであれ猥談にふける生き物なのだろう。

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 BBQがお開きとなると、愚かな男性4人でまたパブストリートへと出かけ、爆音が流れる街で酒を飲み、よく分からない踊りを踊ったり、アジャコングに接待されたりした。

 世にも奇妙でカオスな夜であった。

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