ブログを移行するというのもなかなか骨が折れる作業であった。どうせ見ている人なんて全宇宙のほんの一握りの人たちだというのに、わざわざ新しくする必要があったのかなどと問い詰められると、辟易してしまう。
何はともあれ、ある程度落ち着いてきたので、こうして再開できることは喜ばしいことである。
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メルズーガ/モロッコ
砂漠キャンプから帰還し、愛するラクダ達に別れを告げた我々は疲労困憊もいいところであり、一目散に自室へと駆け込み、シャワーを浴びる者もいれば砂まみれのままベッドに倒れ込む私のような者もいた。砂漠での実に愉快な体験が夢にまで出てくる、というようなことはなかった。
目が覚めるといつものように昼であった。がしがしの髪の毛をほぐすように入念にシャンプーを練り込んだが効果はなく、当分はどうにもならなさそうだ。
共有スペースが賑やかなので覗いてみると、旅人が増えていた。中には私がセビリアのバスターミナルで見かけた日本人女性二人組もいた。もちろん人見知りをこじらせている私はセビリアで彼女らに話しかけたわけもなく、また一方で、彼女らは私のことを覚えてもいなかった。というような話題に花を咲かせ、みんな楽しく談笑しているというのに、一人だけなんだかそわそわしている男がいた。ダイスケ氏である。聞くところによると彼はそろそろ日本へ帰らなくてはならないのだそうだが、カサブランカ発の飛行機の時間を1日間違えていたようである。2日後だと思っていたものが実は明日だということだった。私もさることながら、彼のルーズさには脱帽である。
いろいろ調べた結果、今日の夜行バスでフェズに戻り、朝一の列車でカサブランカまで行けばなんとか間に合いそうだと、ダイスケ氏が胸を撫で下ろす一方で、皆「間に合わなきゃおもしろいのに」と思っていたことはここだけの話である。特に私は。そんなにおいしい話はない、と。
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暇だったので宿の前で記念撮影などをして残りの砂漠生活をかみしめた。
しばらくすると我々はおもむろにリッチマンプアウーマンに精を出し始めた。もはや習慣の域に達している。他の旅人も混ぜながらそれなりに楽しんでいたわけであるが、トランプが習慣となっている状態は非常に危険である。このままだと13以内の数字しか処理できない体になってしまうのではないだろうか。都落ちなどと言って他人を陥れる方法ばかり知ってしまう悪い子に育ってしまわないだろうか。8流しなどと言って何事もなかったことにして物事を済ませてしまう人間になってしまうのではないだろうか。様々な弊害が頭の中をぐるぐる駆け巡るので、面倒くさくなって8で流した。
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夕飯は今日もタジンであった。さすがに飽きた、などと口にしてはいけない。
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いよいよダイスケ氏の旅立ちの瞬間がやってきた。ヨセフがバスターミナルまで送ってくれるそうなので、みんなでダイスケ氏のお見送りに出かけた。
私は彼に「絶対間に合わないでくださいね」と声をかけた。
彼は顔を青白くしながらも「なんとかなるだろう」と余裕をこいていた。精神状態が不安定である。
なんだかんだと言って砂漠キャンプを共にした仲間なので、非常に名残惜しい。
私は彼と過ごした日々を思い出す。やる気なさそうに起きてくるダイスケ氏。やる気なさそうに歩くダイスケ氏。やる気なさそうにご飯を食べるダイスケ氏。やる気なさそうにピースをするダイスケ氏。
ああ、本当に飛行機に乗れなきゃいいのに、、、
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後日、ダイスケ氏は飛行機に乗れたという一報をくれた。それを見た我々は大いに落胆したのであった。
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